アパート建築営業マンが不動産投資してみた

不動産王になる(はずの)ストーリー✨

✎あなたの知らない世界①✎

こんにちは。本の虫🐞です。

 

私の仕事は富裕層を相手にする商売です。いわゆるハイソサイエティー、セレブリティが相手です。しかし同時に、社会のド底辺の方々とも接点のある仕事でもあるのです。

 

以前に強烈なお客さんのお話をしました。確かに印象に残る方々ではあったのですが、仮にも彼らは大家さんになる可能性のある人たち。つまり、変ではあるけど底辺ではない。

 

 

 

大家さんがアパートを建て替える際、全室空いてから建替えを検討し始める大家さんはあまりいません。半分くらい空いたら建替えを検討し始めて、工事を請け負った業者が立ち退きも手伝うのが通例です。

 

本来は立ち退き交渉は大家さんか、弁護士しか行えません(業者がやると非弁行為)。しかし、昔は建築業者の営業マンが大家さんの代わりに交渉していました。私も以前は大家さんの代わりに立ち退きの手伝いをしていました。

 

そこで沢山の底辺の人たちを見てきました。築40年以上(中には築80年なんてのも)の安アパートですから、住んでいる人もそれなりです。あと一歩でホームレスが沢山います。

 

最近はYouTubeで色んな世界を見ることができますよね。YouTubeがなかった20年前は貧困者の世界って噂には聞いていても実際は未知の世界でした。

 

 

ある時、川崎の簡易宿舎の建替え(普通のアパートへ)を提案していた時、オーナーから話を進める前にまずは現地を見てきてくれと言われました。話はそれからだと。簡易宿舎だからホテルみたいなもの(普通賃貸借ではない)だけど、実際は同じ人がずっと住んでいるから退かすことができないだろうと。20部屋くらいあって、その連中を退かせられるなら建替えてもいいよと。

 

(簡易宿舎ってのは、いわゆるドヤ街にある一泊2,000円くらいのボロ宿。日雇い労働者の寝ぐらです。)

 

私の営業エリアは埼玉でしたから、川崎の歴史にはあまり詳しくなかったのです。そもそも簡易宿舎とアパートの違いもよく分かってなかったくらい。アホな私と部下(もっとアホ)は、なんだ簡単じゃないかと喜び勇んで現地を見に行きました。

 

築50年くらいの2階建ての木造アパート(法的には「寄宿舎」という)です。共同の玄関があって廊下を挟んで両側に部屋があり、トイレや風呂は共同です。

 

初っ端、共同の玄関を開けようとしたら扉が開いて中から中年の入居者が出てきました。もう見た目が普通じゃないw

 

夏だったので赤いタンクトップを着ているのですが、赤いタンクトップが地味に見えるくらいカラフルな地肌をしていらっしゃる。もっと驚いたのはまともな指がほぼない。何回下手打ったらあんな状態になるんだろうか。速攻で目を逸らしてやり過ごしてから中に入ってみました。

 

ドアがずらっと並んでいるわけだけど、各戸の鍵が南京錠(番号合わせるやつ)。つまり、鍵がついてなければ在宅ってこと。やべえアパートだなとは思いましたが、この時点ではまだ会社のノルマ、上司からのご指導の恐怖の方が勝っていましたから、とりあえず何軒かと話をせざるを得ない。

 

奥の部屋からはテレビのスピーカーの音が爆音で漏れています。多分高齢者で耳が遠いのだろうけど、廊下にいても番組の詳細が分かるくらいの音量。そこは避けて、他の鍵がついてない部屋をノックしてみました。(正確には部下にノックさせた)

 

出てきたのは割と普通のじいさんでした。このアパートを建替える計画があるんだけど云々って伝えたら。それは困るなあ、引っ越す先もないし。みたいな反応で、他の部屋の住人のことも軽く教えてくれた。

 

川崎は元々、工業の街だから日雇い労働者が沢山いたんだと。そういった労働者は仕事ができなくなってからも住むところがないから簡易宿舎に住み続けている。最近は(20年前のはなしだが)労働者だけじゃなくて、元ヤクザもいるし、色んな連中が住むようになったと。

 

そんな話をしている最中に、温和そうなじいさんが突然テレビの音がうるせーって切れだして(ずっとテレビは鳴り響いていたのだが)、その爆音させてる部屋に行ってガンガン扉を蹴りはじめたの。うるせーんだよ!テレビ捨てちまうぞゴルァ!って。

 

一見普通のじいさんですらこんなんだったら、他の部屋はどんなモンスターが住んでんだよ・・・

 

建替えの提案は諦めてそそくさと退散しました・・・