アパート建築営業マンが不動産投資してみた

不動産王になる(はずの)ストーリー✨

✎あなたの知らない世界②✎

今回は実際に立ち退き交渉まで進んだお話。

 

これもまた神奈川での話です。訳あって平塚でアパートの新築を請負うことになり(これがまたいわくつきの契約。それはまた後日)、立退き交渉をすることになりました。

 

地方に住んでいる方は見たことあると思いますが、当時は平屋の貸家が結構ありました。

 

こんな感じのが4棟あって、3棟がまだ入居していました。戸建てはアパートの立ち退きと比べると格段に難しいんです。このタイプに住んでる人はアパートには移ってくれないんです。ペットを飼ってたり、家の周りに荷物を置いていたり、共同住宅が嫌だったり。だから次も戸建てを探さないといけない。でももう、そもそもこんな物件は少ないんです。

 

それでも期日(3か月くらい)までに退かさないといけない。退かさないと上司からのありがたいご指導が待っている。

 

まずは地場の賃貸業者を回って平屋の物件を紹介してもらうんですがなかなか物件がない。こういう古い貸家って大家さんが直接貸してる物件が多いんです。だから現地を歩いて回って空いている貸家を探す。んで、大家さんと直接交渉をするわけです。

 

まあ、基本的にこんな物件の入居者はみんなひと癖ありますが、なかでも1軒困った人がいました。50代くらいの独身男性で、左官屋。職人だから商売道具が大量に家の周りおいてあり、車も敷地内に停められないといけない。んで、趣味が映画だからケーブルテレビが入ってないとダメ。

 

それでも物件を見つけてきて案内する。一旦は気に入って審査まで進める。ところが審査が折角通ったのに、なぜか後から難癖つけて断るんです。賃貸借契約書を交わさずに住みたいとか。それを3回繰り返した時点でさすがにこちらも相手をするのが嫌になって、もう戸建て物件は無いから勝手に引っ越してくれ。もうこっちでは手伝わないからと伝えました。

 

不思議なもので突き放すと寄ってくるんです。ただ、どちらにしても希望に適うところは紹介した3軒しかないから、そこから選んでくれと伝えました。

 

なんとか1軒に絞らせて賃貸借契約まで漕ぎ付けました。当日家まで車で迎えにいって、管理会社まで一緒に行きました。管理会社といっても農家のじいさんが一人で片手間にやってる不動産屋です。実際に社長は農業が本業だと言ってました。

 

そこで衝撃の事実が発覚します。その入居者さん実は字が書けなかったのです。それが恥ずかしくて言えなかったと。親も左官屋だったそうで、もの心付いた時から親の手伝いをしていたので小学校も行ってないのだとか。しかし時代は平成ですよ。江戸時代の長屋じゃないんだから。当時50代だから1950年代の生まれだったと思います。その年代で字を書けない人がいるというのはかなりの衝撃でした。

 

今の賃貸業者だったら自著できないと断られる可能性がありますが、その管理業者のじいさんはかなり人がよく、いいよ俺が書いとくからって。そういう人もいるからねぇって社長は言ってたけど、後にも先にも字を書けない人はその人だけでした。

 

あの人、今70代になってるだろうけどまだ元気かな?